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Image: Conclusion of international conference. Source: Stockholm+50

気候変動対策の1000億ドル支援公約、果たされず

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Image: Conclusion of international conference. Source: Stockholm+50

【国連IDN=タリフ・ディーン】

6月初めにスウェーデンで開催された国際会議「ストックホルム+50」で、国連のアントニオ・グテーレス事務総長が、干ばつや洪水、熱波、公害、多様性の喪失などが世界的にもたらしている壊滅的な影響を軽減するための資金提供を富裕国が怠っていることに対して強い不満を表明した。

資金不足は、貧困や飢餓を2030年までに根絶するとした国連の17項目の「持続可能な開発目標」(SDGs)の履行にも影を投げかけている。

「私がはっきりと言ってきたのは、先進国は2020年以降、年間1000億ドルを途上国に支援するという公約を実行すべきということです。そして、残念なことにそれは2020年には実行されず、2021年にも実行されていない。これまでのところ、2022年にも実行されるのかどうかはっきりしていません。」とグテーレス事務総長は嘆いた。

しかし、開始から3年が経過したコロナ禍と、ロシアによる2月以降のウクライナ侵攻がもたらした壊滅的な経済的影響によって、資金提供の公約を果たすことが難しくなっている。

6月2・3両日に開かれた「ストックホルム会議から50年」会議は、1972年の国連人間環境会議から50年の節目に開かれたものだ。同会議は、スウェーデンの首都で開催された史上初めての環境に関する国際会議と言われ、1992年のリオデジャネイロでの歴史的な地球サミットへとつながっていった。

今回の会議では、17項目のSDGsのすべてが健全な地球に依存しているとの見方が示された。「私達は気候変動、公害、生物多様性の喪失という三重の危機による被害を回避する責任があります。地球の自然体系は私達の要求に追いつけません。それは地球だけではなく自分たちをも傷つけているのです。健全な環境が、すべての人々、17項目のSDGsすべてにとって必要なことです。それによって、食料や清潔な水、医療品、気候規制、異常気象からの保護が提供されることになるのです。」とグテーレス事務総長は語った。

スウェーデンが主催した今回の会合は、1972年のストックホルムでの会議に源流を持つ国連環境計画の本拠地でもあるケニアの支援も得ている。

ケニアのケリアコ・トビコ環境大臣は、「この2日間で出てきた様々な声や大胆なメッセージは、この会議の可能性に応え、私たちの唯一の惑星である地球に、私たちの子供や孫のための未来を築きたいという、真の願いを示しています。私達は単に記念するためにここに来たのではありません。1972年以来の歩みを踏まえて、より良い未来を築くために来たのです。」と語った。

「ストックホルムから50年会議」の事務局長であり、国連環境計画の代表でもあるインガー・アンダーセン氏は、「私達は国連人間環境会議から50年の今年、何かを変えねばならないとの思いをもってここに来ました。もし変わることができなければ、気候変動、自然と生物多様性の喪失、公害と汚染という地球の三重の危機が加速されることになるでしょう。このエネルギーと行動への公約を前に押し進めて私達の世界を形成しなくてはなりません。」と語った。

17項目のSDGsの中で、第13項目が気候変動対策を呼びかけている。

国連開発計画によると、気候変動からの大きな影響を受けていない国はひとつとして存在しない。温室効果ガスの排出は1990年より5割以上も増えている。地球温暖化は気候システムに長期的な変化を引き起こし、いま行動しなければ不可逆的な結果がもたらされる危険性がある。

気候変動が原因で起きている災害による経済的損失の年間平均は数千億ドル規模に上る。国連開発計画によれば、これとは別に地球上の災害で気候変動関連が91%もあり、1998年から2017年の間に死者130万人、負傷者440万人を数えている。

SDGsは、気候変動に対応し低CO2排出型の開発に投資する途上国のニーズに応えるために年間1000億ドルが必要との目標を立てている。

グテーレス事務総長は過去を振り返ってこう述べた。「スウェーデンの偉大な故オロフ・パルメ首相が当時述べたことを引用します。『人間―環境の分野では、人間にも国家にもそれぞれ独自の未来などと言うものはない。私たちの未来は共通のものだ。私たちはそれを共有して共に築き上げねばならないのです。』と。」

「気候変動からコロナ禍、ウクライナ戦争に至るまで、私たちが抱えている世界的な問題全体にわたって、故パルメ首相の見方は今でも意義を持っていると信じています。」とグテーレス事務総長は語った。

また、世界のあらゆる部門の指導者に対して、世界を「この混乱から救い出す」よう訴え、G20の諸政府に対して石炭インフラを解体するよう求めた。経済協力開発機構(OECD)の国々に関しては2030年までに、その他の国々に関しては2040年までに石炭利用から脱却するよう訴えている。また、すべての金融関連アクターに対して、化石燃料への投資を止めた代わりに再生可能エネルギーに投資するよう求めた。

会議では4つの全体会が開かれ、世界の政治指導者らが、2030アジェンダと持続可能な開発目標の履行を加速させる大胆な環境関連活動を呼びかけた。

指導者による3つの対話セッション、若者による会合など無数のサイドイベント、ウェビナー、今回の会議に向けた地域レベルでのさまざまな利害関係者による一連の協議によって、世界中の多くの人々が集って議論に参加し、自分たちの見解を披露した。

事前の予測によると、6000人が個人で参加登録をした。そこには、参加146カ国からの10人の国家元首、110人の閣僚も含まれている。

気候変動の帰結に対する警告は、国連総会のアブドラ・シャヒド議長からも寄せられた。議長は、海面の上昇によって絶滅の危機に立たされている島嶼国モルディブの出身である。

「今日、私たちは地政学的なものから環境問題まで、相互に関連した多くの地球規模の危機に直面しており、人類の進歩と繁栄が健全な環境と深い相関関係にあることが改めて明らかになりました。こうした危機を解決し、持続可能な開発に向けた2030アジェンダを実行する能力は、現在直面している地球規模の難題に対処する私達の能力にかかっている。」と語った。

またその例として、「パンデミックによる世界経済やサプライチェーンの混乱は、私たちの生活、食料安全保障、福祉に影響を与えています。しかし、気候危機が続き、その規模と深刻さが加速度的に増大するにつれ、その影響に効果的に対処する私たちの能力はさらに低下していくことになります。」と、シャヒド議長語った。

さらに、「私達の世界の食料システムは、気候変動の帰結や生態系の破壊という制約の下で困難に直面しています。干ばつ、土壌の劣化、砂漠化、海洋生物等の生物多様性の喪失、重要な天然資源の減失は、私達が直面している問題の一部に過ぎません。よりよい将来を生み出すために私達は子どもたちや孫たちに対する責任を持っているのです。」と語った。

他方、6月7日に発表された「オックスファム」の調査報告書によると、洪水や干ばつのような異常気象に対応する国連の人道支援は20年前の8倍の規模になっており、ドナーは要請に応えることができていない、という。

国連による気候変動関連支援要請2ドルあたり、ドナー国は1ドルしか支援できていない。

2000年から2002年にかけての異常気象関連人道支援の年間平均要請額は少なくとも16億ドルであり、2019年から2021年にかけてはその819%にあたる平均155億ドルに増えている。

今日の気候変動の原因のほとんどを作った富裕国は、2017年以来、この要請の54%しか満たしておらず、330億ドルが不足している。

異常気象によって頻繁に人道支援要請を繰り返している国としては、アフガニスタン・ブルキナファソ・ブルンジ・チャド・コンゴ民主共和国・ハイチ・ケニア・ニジェール・ソマリア・南スーダン・ジンバブエが挙げられる。

[オックスファムの]報告書『支払いをする(Footing the Bill)』は、気候変動によって異常気象の頻度と激しさが増していることは、すでにして不足している人道支援システムへに対する圧力になっていると指摘している。

嵐や干ばつ、洪水による破壊のコストとは、不平等を加速させることだ。貧困地域や低収入の国々の民衆が最も激しい被害を受けるが、彼らには富裕国が本来は対処すべきシステムや資金が欠けている。

地球上の富裕層上位1%が貧困層の半分の人々の2倍のCO2を排出している。

国連の要請は最も緊急の人道支援に焦点を当てているが、気候変動が国々の経済に与えている損失や損害の表面を僅かになでているだけに過ぎないとオックスファムは述べている。

2021年の異常気象による経済コストだけでも、世界全体で年間3290億ドル(史上3位)に上るのではないかと推定されている。これは、富裕国が途上国にその年提供した援助全体の2倍の額にあたる。

中低所得国に対する損失や損害のコスト、例えば、サイクロン後に住宅や病院を再建したり、シェルターや食料、緊急現金給付を提供するために必要な資金は、2030年までに2900億ドル~5800億ドルに達する可能性がある。これには、人命、文化、生活様式、生物多様性の損失といった非経済的損失は考慮されていない。

国連の要請は、気候災害のコストのうち、特に脆弱な人々にかかるコストの一部に過ぎず、苦しんでいる人々のほんの一部にしか届いていない。

オックスファムの調査は、国連の要請では、2000年以来、異常気象災害によって影響を受けた中低所得の国々の推定39億人のうち僅か4740万人、つまり8人に1人しかカバーできていないと指摘する。

オックスファムのガブリエラ・ブッチャー事務局長は、「人間の活動は産業化以前のレベルより地球の平均温度を1.1度押し上げ、私達は今その影響に苦しんでいます。さらに憂慮すべきことに、現在の予測では『1.5度上昇』というセーフティ・ラインすら上回りかねません。気候破壊のコストは上昇し続け、今排出量を削減しなければ、人類に破滅的な結果をもたらすでしょう。人命や家屋、学校、雇用、文化、土地、先住民族や地域の知恵、生物多様性といった、この背後にある莫大な経済的・非経済的損失と損害を無視することはできません。」と語った。

さらに、「これは私達が長い間警告を続けてきた気候の混沌状態です。気候変動によって最大の被害を受けている多くの国々は、紛争や食料価格の上昇、コロナ禍などの影響を既に受けています。これが、不平等の拡大、強いられた大規模人口移動、飢餓、貧困につながっているのです。」とブッチャー事務局長は警告した。(06.07.2022) INPS Japan/ IDN-InDepth News

 

 

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