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高まる水危機で紛争の危険が高まり、SDGs実現も危ぶまれる

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【国連IDN=タリフ・ディーン】

中東の激動の政治と言えば、石油というたったひとつの宝の商品がもたらす不確実な富の問題に長らく集約されていた。

中東のある外交官はかつて「水を求めて乾いた砂漠を掘れば、必ずと言っていいほど石油が出てくる。」と語ったものだ。

しかし、水危機の高まりはそれを凌駕しており、途上国の数十億人の生活に影響を与えている。そして彼らの手には、残念なことに、石油も水もないのである。

3月22日に国連が発表した最新の報告書は、水をめぐる緊張が世界全体で紛争を悪化させていると警告した。

国連の水問題フォーラム「UNウォーター(国連33機関で構成)」を代表して国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)が発行した『国連世界水開発報告2024年版』は、平和を維持するには各国が国際協力と国境を越えた合意を促進しなくてはならないと指摘している。

世界で30億人以上の人々が国境を越えた水資源に依存している。しかし、すべての共有水について協力協定を結んでいるのは24カ国にすぎない。

今日、22億人が依然として安全に管理された飲み水を手にすることができず、35億人が安全に管理された衛生サービスを利用できない。

17項目の持続可能な開発目標(SDGs)の中では、第6目標が「すべての人々に水と衛生へのアクセスを確保する」ことを謳っている。水資源や下水処理、生態系の持続可能な管理に焦点を当て、人々の可能性を広げる環境の重要性を謳っている。

しかし現在のところ、この第6目標を含むSDGsのどれもが順調に進んでいるようには見えない。

安全に管理された衛生を巡る状況は暗く、35億人が衛生サービスを利用できていない。都市や自治体は、加速する都市人口の増加に対応できていない。

「2030年までにすべての人が水を利用できるようにするという国連の目標は達成に程遠い。」と報告書は述べている。

国連総会(加盟193カ国)のデニス・フランシス議長は、3月22日の「世界水の日」いおける発言で、「水は生命の本質であり、水には本来国境などなく、境界線や文明を超えて自由に流れるものだ。今日ニューヨークに降る雨は、雄大なナイル川や美しいセーヌ川から流れてきたものかもしれない。私たちの生態系や水循環、ひいては私たちの世界の相互関係を鮮明に示している。」と語った。

水の過剰、不足、汚染、そのいずれであれ、水を巡る複雑に絡んだ状況は、気候変動の容赦ない影響によってさらに複雑化している。

フランシス議長は、水を巡るこうした状況が、社会的緊張や経済格差、政治的不安定の問題をさらに悪化させ、紛争と社会的不安定のリスクを高めていると指摘した。

だが、こうした過去の難題の中には、集団的な解決や協調のヒントが潜んでいる。水を巡る協力は、水が確保された平和な社会を作るうえで、単に利益をもたらすというだけではなく、不可欠なものなのである。

「気候変動の影響が増大し、人口が増加する中、最も貴重な資源の保護と保全に向けて各国内および各国間で団結することが緊急に必要とされている。」とフランシス議長は語った。

ユネスコのオードレ・アズレ事務局長は、「水資源への負荷が強くなる中、地方や地域での紛争のリスクも高まっている。ユネスコのメッセージは明確だ。すなわち、もし平和を守りたいのなら、水資源を守るだけではなく、この領域において地域と世界全体での協力を強化するために緊急に行動しなくてはならない。」と語った。

国際農業開発基金(IFAD)とUNウォーターで代表をそれぞれ務めるアルバロ・ラリオは「水は、持続可能かつ公正な形で管理されれば、平和と繁栄の源になりうる。また、文字通り農業の血液ともなり、多くの人々にとって社会経済的な原動力になる。」と語った。

ユネスコの報告書によると、2001年から2021年までの間に、干ばつによって影響を受けた人々は14億人に上る。

2022年時点で、世界人口の約半数が少なくとも一年の一部で深刻な水不足に見舞われており、4分の1は年間再生可能な淡水供給量の8割以上を使用する「極めて高い」レベルの水ストレスに直面している。

気候変動によってこうした現象の頻度と程度は強まると見られ、社会的不安定のリスクは高まっている。

他方で、オックスファムが3月21日に発表した報告書は、世界で最も影響力のある食料・農業企業のわずか28%しか水使用量を減らしておらず、水の汚染を減らす対策をしている企業はわずか23%しかいないと警告している。

「世界ベンチマーキング同盟」のデータを使用して350社を分析したオックスファムの今回の報告書は、3月22日の「世界水デー」に先立って発表された。

45年以上前に水に関する初めての大きな会議を招集した国連は、推定20億人が安全な飲み水を手にすることができず、最大30億人が年間のうち少なくとも1カ月は水不足を経験しているとしている。

分析の対象となったカルフール社やアブリル・グループをはじめとした350社は、世界の食料・農業企業の年商の半分以上を占めている。淡水利用の7割は農業向けであり、世界の産業ではこれ以上に水を使用する部門はない。工業的農業は水汚染に大きな責任を負っている。

オックスファムの分析はまた、350社中108社しか、水の少ない地域からの水利用についての情報開示をしていないと述べている。

「大企業が大量の水を汚染したり消費したりすれば、その犠牲になるのは地域社会だ。井戸は空になり、水道代は上がり、水源が汚染されて飲み水には適さなくなる。水が少なくなれば飢餓につながり、病気が増え、居住地を追われることにもなる。」とオックスファムフランス支部のセシル・ドゥフロー支部長は語った。

「企業が自らの慣行を変えるような善意に期待することはできない。政府が企業に自らの責任を取らせ、企業の利益追求に対して公共財を守らねばならない」とドゥフローは話す。

水と富は分かちがたく結びついている。富裕層は安全な飲み水を手にすることができるし、自費で高い水を買うこともできる。他方で、貧困層は、公的な上水道を利用できないことも多いし、水道代に収入の相当の部分を割かねばならない。

ペットボトル水市場の急成長は、大企業がいかに水を収奪・商品化しているか、それによっていかに不平等や汚染、害悪が加速されているかを示している。

国連によれば、巨大化するペットボトル水産業は、持続可能な開発目標の第6目標(安全な飲み水をすべての人の手に)の進展を遅らせている。

フランス当局は、2023年5月から2カ月、ボルビック地区を含んだピュイ・ド・ドーム県の干ばつ被害地域で多くの人々に水道使用制限を課している。

しかしこの制限は、多国籍企業ダノン社の子会社であるボルビック社には適用されていない。同社はこの間も、ボルビックの水ペットボトル生産のために地下水を使用し続けている。オックスファムによれば、2023年、ダノン社の利益は8億8100万ユーロに達しており、株主に12億3800万ユーロを配当している。

地球の気温上昇によって、干ばつの頻度が増し、降雨パターンや水の流出のあり方が変化することで、東アフリカや中東などの元々水資源の少ない国ではさらに水が少なくなるであろう。

人々が長い時間列に並んだり長距離を水を汲みにいったりするなど、日常的な水源へのアクセスでどれだけ苦労しているか、汚染された水を利用することでいかに健康を崩しているかを、オックスファムは長らく観察してきた。

たとえば、南スーダン・レンクにある中継キャンプでは300人以上の人々がたった一つの蛇口を共有しており、コレラなどの感染症蔓延の危険が高まっている。オックスファムは昨年、ソマリアやケニヤ北部、エチオピア南部の一部の井戸の9割が完全に枯れていると警告した。

オックスファムは各国政府に次の行動を求めている。

・水は人権と公共財の問題であると認識すること。人間への水の提供に関しては、利益追求を優先してはならないこと。

・水の汚染問題を含め、企業が人権や環境権・環境法を乱用・違反しないよう責任を取らせること。

・水の確保や公的水供給への補助、持続可能な水管理、気候変動に強い水・衛生に投資すること。水と衛生に関する国家計画・政策において、女性のリーダーシップ発揮や参加、全ての段階での意思決定を確実にすること。(原文へ

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