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Public Water tap. Credit: Caribbean Community Secretariat.

|カリブ海地域|気候変動が水危機を引き起こす

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Public Water tap. Credit: Caribbean Community Secretariat.

【ポートオブスペイン(トリニダード)IDN=リンダ・ハッチンソン=ジャファール】

 世界全体で推定40億人が水不足に見舞われる中、6月初めに開催された地域会議では、カリブ海地域の小島嶼国が直面している特有の問題が取り上げられた。その中には、カリブ海の水循環に大きな影響を及ぼしている気候変動の問題も含まれている。

 気候変動によって水不足が加速し、干ばつの頻度や厳しさが強まるなど、水を巡る環境は厳しさを増している。同時に、財源不足が水不足問題への対処を妨げている。

 バルバドスで6月6・7両日に開催された「カリブ海地域水会議」では、同地域が直面している厳しい水危機に対処する行動が緊急に求められていることが強調された。

 バルバドスのミア・モトリー首相(写真左)は会議冒頭の演説で、海水の浸入、降水量の減少、蒸発の加速といった状況の中で、基本的な水インフラの整備にかける資金調達においてすら、各国が法外な金額を高利で短期借り入れせざるを得ない理不尽さを強調した。

 モトリー首相は、水危機は「現代における最大の課題」であって小島嶼国には深刻な問題であり、様々な面で早急な対策が必要であると主張した。また、気候変動の影響に加え、限られた資源と資金調達へのアクセスが、この地域の脆弱性を悪化させていると付け加えた。

 国連環境計画のクリス・コービン調整官は、「気候変動が水資源に及ぼす影響は多岐にわたり、既存の問題を悪化させ、この限りある資源を巡る競争が激しさを増しています。また、ラテンアメリカ・カリブ海地域の水資源の状況は深刻です。」と指摘した。現在、同地域の実に25%の人々が飲み水にすら欠く状態にあり、水系感染症やその他の健康上のリスクに対して脆弱な状況にある。また、域内人口の60%が安全な衛生サービスを利用できておらず、公衆衛生と環境の維持に対するリスクとなっている。

 「水利用を巡る競争は気候変動によって悪化しています。老朽化したインフラ、人間の健康、生態系の保全に対する水の需要について、どのようにバランスをとっていけるでしょう。」とコービン調整官は疑問を呈した。

 カリブ共同体(CARICOM:構成20カ国)のアームストロング・アレクシス事務次長もまた、気温の上昇、降雨量の減少、干ばつの長期化、砂漠化、塩害、ハリケーンの大型化といった気候変動のもたらす問題が、カリブ海の水資源に深刻な影響を及ぼしていることを強調した。

 このような問題は、国土が狭い小国や低平地国では、水資源を開発する際に利用できる選択肢が限られていることから、一層悪化している。アレクシス事務次長は、「このような国々では、淡水の供給を含む物質的な資源や、その資源を生み出す能力が限られていることを意味します。」と語った。

 アレクシス事務次長はさらに、「私たちは重大な岐路に立たされており、時宜を得た今回の会議は、この地域で進行中の水管理上のニーズを(適切な文脈の中で)位置づけるのに役立つはずです。国際社会による対応は、資源に乏しい国々のニーズを満たすには不適切な規模でしかありません。」と指摘した。

 パネルディスカッションに登壇した国立海洋大気機構(NOAA)物理科学研究所のロジャー・パルワーティ主任研究員は、カリブ海地域の小島嶼国が直面している水関連の問題の主な要因について、「ハリケーンでも、海抜面の上昇でもなく、飲み水の不足が主な要因です。そこで、大気中に拡散した水蒸気の動きに関する理解が、この地域における水利用を決定する上で不可欠です。水危機の進行状況に鑑みれば、調整と対策を講じる努力が不足していることは明らかです。」と語った。

 「まるで異なるゲームをしているようで、そのために一連のパラドックスが発生しています。一滴の水を確保し環境を守ることに最大の経済的価値を置こうではありませんか。人びとが平等に飲み水を手に入れることができるよう協力しようではありませんか。」と、パルワーティ主任研究員は語った。彼は、トリニダード・トバゴの科学者で、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)にも協力した。この問題を解決するためなら水道の民営化もいとわない姿勢だ。

 米国際開発庁の気候問題専門官で次官補代理のギリアン・キャドウェル氏は、「水は生命の本質です。そしてこの限られた資源は、今日人類が直面している最も緊急の課題を巡る闘争の場となっています。洪水や台風から、現在『アフリカの角』地域を襲っている干ばつに至るまで、気候関連災害の9割近くが水関連のものです。」と指摘した。

 これらの問題は深刻度が増しており、国際連合児童基金(ユニセフ)は、世界のおよそ40億人が今日水不足に直面しており、2025年までには世界の人口の5割が、少なくとも年に1カ月は深刻な水不足に見舞われることになると予想している。

 キャドウェル氏は、「この危機的状況の背景には、多面的な理由があります。世界は降雨量の劇的な増加と減少の両方を目の当たりにしており、水に関連した不規則な出来事を引き起こし、水の供給や廃棄物管理システムに必要な重要インフラに大きな損害を与えています。また、急速な都市化も問題の悪化に寄与しており、水不足の悪影響が社会に行き渡って、生活の様々な局面に影響を及ぼしています。生産性は低下し、物価は上昇し、栄養が不足して子どもに悪影響を及ぼしています。つまり知的にも身体的にも成長を阻害しているのです。水は生命そのものであり、死を意味することもありえるのです。」と語った。

 カリブ共同体気候変動センター(CCCCC)のコリン・ヤング センター長は、バルバドスのモトリー首相が提起した問題に改めて触れた。とりわけ、気候変動に関連した水問題に対応するための融資を求めている小国が直面する課題を指摘し、脆弱な国々が緊急の気候変動問題に効果的に対処する能力を妨げている複雑で断片的なプロセスを強調した。

 ヤングセンター長はまた、「適切な資金調達が困難が現状が、気候変動の影響に対応しようともがいているカリブ海諸国にとって高いハードルとなっています。国際的な気候変動関連の金融枠組みは世界の最も脆弱な国々のニーズを満たせていません。制度があまりに複雑で、実行があまりに遅く、私たちが直面している事態の緊急性に見合ったものが提供されていません。」と語った。

さらに、「気候変動資金を提供するために、『グリーン気候ファンド』や二国間取決めのような様々な資金調達メカニズムが設立されてきました。しかし、現実には様々なドナーがバラバラに、かつ異なった基準の下で動いており、協調的な金融の要件を各国が満たすことが難しくなっています。このような分断された金融状況が、水不足に対応するための資金調達を困難にしているのです。例えばカリブ海諸国向けの水プログラムを開発するためには、まとまった地域的枠組みではなく、国ごとのアプローチを進める必要があります。」と指摘した。

モトリー首相は会議冒頭の演説で「実際には、地球の人々と地球のバランスを保つために不可欠な要素である生物多様性に対して国際社会は適切に行動することが重要です。そのためには、諸国が市民を守る水インフラ構築のために利息が二桁にもなる短期融資に依存せざるを得ない状況を強いらないようにする必要があります。」と語った。(06.29.2023) INPS Japan/ IDN-InDepthNews

 

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