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|スリランカ|紅茶農園が干ばつを背景に環境意識の転換を迫られる

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Giri Kadurugamuwa – a conservationist, shows how land degradation is damaging a tea plant, making it hollow and fragile: “If you claw at the trunk, it will start to peel off.” Credit: Stella Paul.【ラトナプラIDN=ステラ・ポール】

リルヒナの製茶工場で稼働している十数台の機械から発している耳をつんざくような回転音を聞くと、頭に激しい一撃を食らわされたような気になるが、この工場で働くビヒタ・マドゥラさんやラジャカクシミ・チャンドラクマールさんにとっては心地よい音楽のようなものだ。

騒音をあげ黒い煤を吐き出しているこの機械は、彼女たちにとっては最も肝心なこと、つまり「今日も一日働くことができた」という事実を象徴するものだ。マドゥラさんは、シャベルで茶葉を巨大な煎り釜に投入しているチャンドラクマールさんを見ながら、「これが私たちにとっての日常です。」と語った。いずれも40代のマドゥラさんとチャンドラクマールさんが安堵しているのには理由がある。紅茶生産大手「ディルマー」社のカワッテ・農園が保有するリルヒナ工場は、スリランカで屈指の優良茶葉生産企業だからだ。

しかし、スリランカ全土を見れば、紅茶産業は、干ばつ、日照り、豪雨、土地の劣化、土壌の喪失、茶葉価格の急落、生産量の低下、移住労働、相次ぐ工場閉鎖といった数多くの難問に直面している。

スリランカの紅茶産業は年間で3億8800万キログラムの紅茶を生産し、外貨だけでも16億ドルを稼ぎ出している。しかし、スリランカ輸出開発委員会(EDB)によると、この4年間で製茶業は着実に衰退しているという。その主な理由は、日照りや、平均を下回る降雨量、そして干ばつである。

スリランカ政府と世界食糧計画(WFP)が合同で出した報告書によると、2016年の降雨量はこの30年間の平均を23%も下回っていた。結果として、スリランカは30年間で最悪の干ばつに見舞われている。

政府と国連人道問題調整事務所(OCHA)による別の報告書では、スリランカの25県のうち17県で、100万人以上が長引く干ばつの影響を現在受けているという。

スリランカ気象庁によると、国連気候変動枠組条約の基準で「厳しい」と表現される今回の干ばつは2016年初頭に始まった。日照りが繰り返され、エルニーニョ現象によってさらに事態が悪化している。全土で気温が急上昇し、スリランカの主要な紅茶生産地であるラトナプラでは、例年の平均気温27度よりも6度以上も高い平均33度を記録した。

この結果、農業部門全体に被害が広がり、主要作物の収穫が減少している、と食糧農業機関(FAO)は報告している。FAOの統計では、水不足のために、作物収穫面積が通常の80万エーカーから30万エーカーにまで縮小している。

紅茶開発委員会によると、紅茶生産部門では2016年の茶葉収穫量が11%減少し、この7年で最悪であった。今年1月、生産量はさらに15.3%も落ち込んだ。

紅茶農園では、水量の低下に加え、干ばつの影響により土地の劣化と土壌喪失が進行している。こうした状況は、「中央高地とその他の辺境地域に適切な土地・水管理を導入し、土地の劣化を最小に止め、土地・水の生産性を向上させる」ことを約束したスリランカの「約束草案(INDC)」に反映されている。

紅茶生産者から中部州マスケリヤで持続可能な土地管理の指導者に転じたマヘンドラ・ペイリス氏は、「従来ここでの紅茶の栽培方法は、化学合成除草剤や殺虫剤を過剰に使用するなど、きわめて環境に有害なものでした。土壌の質や周辺の環境に気を使う者など以前は誰もいませんでした。つまり、土壌喪失や土地劣化はこうした慣習の副産物といえます。」と説明した。

マスケリヤ茶農園の元管理人だったペイリス氏は「今や干ばつにより土壌喪失が一層加速し、茶の木にストレスを与え、土壌の栄養が失われています。これにより、紅茶の生産量と収入が減る可能性が高まっているのです。」と語った。

Shashi Kala – a tea worker at the Bearwell tea estate in western Sri Lanka’s Sabaragamuwa province – one of the plantations that has adopted sustainable land management measures to plug draining of its profits. Credit: Stella Paul.シャシ・カラ氏(37)は中部州ヌワラ・エリヤ県のベアウェル茶農園で働いている。茶葉を1日19キロ摘んで、日給は750ルピーだ。しかし、今シーズンは労働者が摘んだ茶葉の平均量が15キロを下回ることも少なくないという。「以前には50キロ摘んでいた人もいましたが、今では毎日の割り当て量をこなすので精一杯です。」とカラ氏は語った。

「つまり、収穫量が減っても茶農園の経営者は労働者に同じ賃金を支払わねばならず、その分利潤に食い込むことになります。」とラトナプラの自然保護家ギリ・カドゥルガムワ氏は語った。

損失を抑えるために一部の紅茶農園では賃金が切り下げられ、労働者による集団抗議や集団離脱に発展している。このため、この2年で20以上の紅茶工場が閉鎖に追い込まれた。「労働者の離脱に多くの経営者が頭を悩ませています。」とベアウェル茶農園の管理者ディルシャンカ・ジャヤティラケ氏は語った。

危機が広がる中、多くの紅茶農園が、「熱帯雨林同盟認証」を申請するようになってきている。熱帯雨林同盟は、未来に目を向けている農業、林業、観光業の事業家たちと協力して、自然資源を保護し、森林共同体の長期的な経済安定性をもたらす活動を行うとともに、世界各地で増加している良識ある消費者のコミュニティにこれらの事業家を結び付ける活動を展開している団体で、「熱帯雨林同盟認証」は、環境・社会・経済面の持続可能性のシンボルとして国際的に認知されている。

スリランカ「熱帯雨林同盟」のカドゥルガムワ代表は「これまでのところ、ベアウェルやカハワッテ、ワタワラのような主要な生産者も含め、スリランカ国内で78の農園が認証を受けています。」と語った。

熱帯雨林同盟は現在、国連環境計画地球環境ファシリティ、地方政府と組んで、土地劣化を防ぐことを目的とした持続可能な土地管理プロジェクトに取り組んでいる。

このプロジェクトをリードする指導者のひとりであるマヘンドラ・ペイリス氏は、「認証を受けるためには「持続可能な農業ネットワーク(SAN)」が策定した厳格な社会・環境基準(農場の労働力の福祉や環境の改善等)を満たさなければなりません。」と語った。

環境改善措置には例えば、合成除草剤・殺虫剤の使用をほぼゼロあるいは完全にゼロにすること、水資源の保全、農園や工場での水リサイクル、非再生可能エネルギー源の最小限度での利用、農園内での植樹によるCO2吸収量の向上などが含まれてなくてはならない。

カハワッテ農園の管理人ジャナカ・グナワルデネ氏は、「気候変動と紅茶農園の環境基準にますます敏感になっているバイヤーの信頼を得るためにこの認証は有効です。」と指摘したうえで、「認証を取得して以来、コロンボでの茶葉のオークションで当農園の製品が高値を獲得することができるようになりました。実際、先週のオークションでは当園の紅茶に680ルピーの値が付いたのですが、これはスリランカで最高値でした。」と語った。(04.04.2017) INPS Japan/ IDN-InDepth News 

 

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